永遠

永遠

 僕は随分な読書家であるので博識だった。特異な存在だった。すごかった。

「アドラー心理学の課題の分離という考え方があって…………」

「わぁっ! ナイトくんってすごいね!」

 岬ちゃんは拍手して僕を讃えた。

 調子に乗った僕は更に続けた。

「あとー、岬ちゃん知ってる? あらゆる存在というものは空なんだ。そして空とはすなわち変化するものなんだよ。だからね、全て実体がないものなんだ。全ては過ぎ去るんだよ!」

「ぅーん、なんだかよく分からないけど分かったよ!」

 冷たい風が吹いた。

 岬ちゃんは「へくちっ!」と可愛らしいくしゃみをした。

 そこで僕は、少しカッコつけてみようと思った。

「あの、よかったら僕のを……」

「あっ、ありがとね。ナイトくんとっても優しいね」

 いやぁ、と僕は照れた。

 岬ちゃんは僕が渡したコートを丁寧に羽織って笑った。

「ナイトくんの、匂いがする」

 僕はなんだか恥ずかしくって、目を逸らした。

 気まずい沈黙が流れる。

「……ねぇ、隣、いい?」

 僕はコクリと頷いた。

「こうしてくっついていた方があったかいよ」

 岬ちゃんは僕にぴとりとくっつく。

 ドキドキした。

 岬ちゃんの吐息が、こんなにも近い。

「ドキドキ、する、かな?」

 挑発的な声音。僕を誘惑していた。

 こんなにアグレッシブな岬ちゃんは初めてかもしれない。

 僕は岬ちゃんを正面に据えると、ついに自らの感情を吐露した。

「あなたのことが大好きです」

 ふぇっ⁉︎ と彼女が困惑した一瞬の隙をついて、僕は岬ちゃんに抱きついた。

「大好き。生まれてきてくれてありがとう。大好き」

「私も、大好きだよ! 愛しているよ!」

 僕らは気づけば涙を流していた。

 今この瞬間は、暖かい幸せに満ち満ちていた。大好きと愛してるでいっぱいだった。

「僕ら、すっごく幸せだね」

「うんうん!」

 ぎゅーーっと、僕らは抱き合っていた。

 やがてお互いの身体を解放すると、僕らは一息に白い息を吐いた。

 うふふ、と笑った。

 こんな日々がずっと続けばいいと思った。

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